短 歌 作 品 集
| 〜 愛 犬 ア ン デ ィ 〜 | ||||
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『短歌研究』『短歌』『週刊文春』『短歌現代』に 2001年 1月より 2009年 12月迄、 掲載されました短歌を集録しました。 花も多く歌っていますが、人に家族、鳥、魚、町、寺等にも目を向けてあります。 1997年にダックスフントのアンディが家族の一員になり、家の中が明るくなりました。 私が家に居れば、いつも私につきまとっていました。 そのアンディは 2011年3月16日、13歳で逝きました。楽しい日々の想い出を歌に 詠んでいます。
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部会あり忍耐がいりウーロン茶飲みに我は席を立ちたる 雨の中図書館に来て本返す櫨の木の葉が散りて美し 散髪に午後は出でたりしかさこそと落葉踏みつつ秋晴れの下 ソファで読書しおればアンディは我が膝に上りて横たわり寝る 小雨降りセンター試験始まれど定年予定者監督免除 椿の花深紅もあり紅白の斑もありて定年坂に春は来にけり アンディはわんと吠えゐて我が膝に上がりたき意志示しをるなり 大学で英語教へて三十九年楽しかりしよ教育の道 柊の青葉鮮やか陽を受けて輝けるなり五月の中ば 額あぢさゐの傍赤あぢさゐ咲きてゐし商店街の大学通り 紫陽花の花薄青にして清々ししばし見とれて帰途につきたり ![]() おしろい花ピンク多かり白もあり黄もまれにある八月の末 期末試験の答案用紙返しをりここまでやるか大学教授 朝食を作りてあれど手をつけず小林医院に採血に行く 再履修の英語クラスでワイルドの童話読みおり別府大学 ![]() 再履修英語クラスの学生ら低調にして冬の時期なり 年末に太宰治を正月に井伏鱒二を面白く読む ゼラニウム赤とピンクの咲きをりて匂ひてみれば生臭きかな 山茶花の生垣沿ひに散歩する国設宿舎北方住宅 我が家のダックスフントのアンディは我に飛びつき我の口をなめたり 我の生れ日八月十五日暑き日よ終戦記念日夾竹桃咲き 大分の柿を食べしは一年前福岡の柿を今は食べをる 定年を待たずに辞めてしまひたり古里近き別府大学 充実の余生持たむと思へども手術の傷跡常に痛みぬ 定年なき妻に感謝す毎食を「いただきます」と言ひてをるなり 二ヶ月を屋内にてよ愛でゐたる鉢植ゑ蘭も遂に萎えたり 夕の五時再読しをへ満足す上田三四二の「短歌一生」 木蓮の白き花達天仰ぐ川崎歯科の庭に咲きをる イラクにて戦争終はり桜散り水木花咲く赤と白とが 花水木白きを看ればエミリーの白きドレスを思ひをりしよ ![]() 咲き盛るマリーゴールドの金色に黄の雨降りぬ今朝のわが庭 桔梗が畑の中に咲きてゐる淡い青色お婆さんの花 我夏ばて腹に力が入らぬなりか細き声のつくつく鳴き止む 右の眼の飛蚊症のひどかりき大きな蚊飛び小さな蚊飛ぶ ライラック白き蕾の咲き初めて旅を憶わせホイットマン読む 南天の花に蜂居てエミリーの白きドレスをふと憶いいる ソローの墓石聖書程の小ささに「単純化せよ」は本人のモットー 教会の裏の狭庭に芒の穂五本開きて秋風の立つ 鎌倉の叔母の電話の声若し九十四歳病みてあれども 朝顔の紺のかなたの月日にて昭和に母逝き今叔母は病む イラクにてイタリア兵ら死者出でたんぽぽ一つ咲きし霜月 トイレにも山頭火の句はりてある川棚温泉閑かな町よ 鳩サブレひとつ食べゐて葛湯飲む吾の世界のこの静けさや 鎌倉の叔母からの鳩サブレ食べをれば黄の彼岸花咲く寺憶ふ イラクへと陸自本隊出発す山茶花の咲きてゐる大寒 とり戻す青春はなし光りつつ深紅の梅は我を観てをる 吾が純な心の思ひとて持ち帰る真赤な八重の桜七輪 黄水仙白水仙を足止めて観る春の喜び青龍街道 桜花散り激しかり冷めたかり妹の死の唐突なりき 八重桜淡き桃色散りてをる雨に潤めりて艶めきてあり 川棚に蛍袋の咲きてゐてひなご旅館つぶれてゐたり エミリィ・ディキンスン好みしものは花鳥虫なかんずく薔薇駒鳥蟋蟀 露天風呂周り万緑遠きには竹林の山萌黄色なり おしろい花淡き桃色懐しや幼き恋の思い出の花 中津の町一万円の顔となり黐の並木が美しき街 アベリアは春夏秋と咲き続く白き花にて香り良きかな 川沿ひの並木の下のアベリアは神無月にも咲き続きゐて 九十五年を真摯に生きてアベリアの咲き終る頃叔母は逝きたり 冬の空見つつ叔母の死おもふとき赫き桜葉一枚散りぬ 番ひたる蜻蛉二尾は二枚羽根飛行機なるよ清しく飛ぶよ どの駅もローカル色の失せるなか湯布院駅舎は画廊にもなる 高千穂の民家の庭に石蕗の花紺の朝顔黄のピラカンサ 焼芋を食みつつ珈琲飲みてをるこれぞまさしく吾の安らぎ 公園の子供らの声黄色くておしろい花黄に揃ふ黄昏 下ばかり見て歩くなと後ろより大きく声かくダックスフントに 子供らは通りすがりにカワイイの言葉を発すダックスフントに 自殺者が三万人を越す国に紺の朝顔霜月にも咲く 自分より大きな犬に吠えかかる柴犬嫌ひなダックスフント 亡き母の晩年しきりに思ひ出す露草に露溜りてをれば 犬連れて散歩しをれば白梅の一部咲きなり春来たるかな 年間自殺者三万越ゆる日本にたんぽぽ咲くよ厳冬なれど 若かりき日の恋憶ひぬ梅の花淡きピンクの雨に濡れたる 白梅の又ここに咲くそこに咲く犬との散歩楽しみて行く 散りしきる染井吉野の下に咲く鬱金桜は黄緑の花 公園の染井吉野は散りつつも鬱金桜は森閑と咲く 桃色の小さき頰の乙女らよ仙酔峡の深山霧島 二階に居階下のブザー鳴りをればダックスフント降ろせと吠える 阿蘇の山ミヤマキリシマ咲き盛り鶯もまたカッコーも鳴く 白百合の匂ひ嗅ぎたり懐かしき昔の君の香りするかな 小雨降る小径を犬と散歩するアベリアの花香を放ちをり コスモスの菊池川畔に紅桃白乱れ咲きゐて川は流れる 八重桜咲けば思ほゆ杳き日にこの公園に君と逢ひしを どこまでも飛行機雲尾を引けり楓並木を散歩しをれば 花八つ手咲くを知りたり神無月鷗外旧居の庭の片隅 山茶花の紅白ピンク墓地に咲く大輪の菊母へたむける 公園の躑躅の中の野良猫をダックスフント追ひしだしたりし 冬の日にテラビア釣りし少年はまた金鱗湖に戻してをりぬ 鵯群れて黐の古木に止まりゐて赤実啄み大空に翔つ 山茶花の散りし花びら血の如しダックスフント踏みてゆくなり 庭土に蕗の薹数多噴き出で春雨の中の鴎外旧居 北九州市中央図書館の躑躅の傍白のたんぽぽひとつ花咲く フリージアの黄色を部屋に置きたれば馥郁たるよ君くれし花 鶯の声清らかに聞こえくるミヤマキリシマ咲きし奥より 銭亀のキーホルダーを買ひたれば金がざくざく入る夢見たり ラベンダーに紋白蝶の舞ひてをり老鶯の声森に響きをる 小粒なる咢あじさいの可憐さよ六月の雨に蕊を濡らしぬ 雨はれてダックスフント散歩さす舗道の脇にアベリア匂ふ 六月にアカンサスの花咲くを見る近藤芳美好みし花なり アベリアの花咲き乱れ散るもあり八月六日原爆忌来る おしろいの白き花咲く道の辺を犬と散歩す清しかりけり 犬連れて散歩しをれば韮の花咲きてをるなり白き秋風 フリージアの青葉日に日に延びゆくを朝毎に見て秋を楽しむ 津和野川白鷺一羽佇みて小魚さがす秋の水澄み 鷺草とゆう花初めて今日見たり瑠璃光寺へ旅し来たりて 桜草移植したりし夜の夢母の風景桜草の色 母好きしドイツ鈴蘭正月に筥崎宮花苑に観たる慶び 桐の花見上げて想ふ亡き父の近衛兵時のカイゼル髭を チョコくれし妻と娘の笑顔ありバレンタインの朝食の時 近隣の至る所に辛夷花空に噴き出づ春は泉よ 鯉達にパンをちぎりてやりたれば三月の光も飲み込みてをり 藤の花咲きてをるなり君思ふ藤の名を持つ女にありせば 藤の花咲き盛りなり君憶ふ藤の名持ちし君でありしよ 行橋市商店街の店頭に花壇の石竹乙女めきけり ベゴニアの白花植えて母悼む母の肖像は黒衣が似合う 鷺草の揺れてゐて影の重ならず瑠璃光寺朝さわやかなりき 川涸れて石ことごとく円み持ち岸辺の柳黄緑なりき アガパンサスの紫の花によく似たる擬宝珠の薄きうすき紫 庭に咲くペチュニアの花日々に見て心しづまるわが生あはれ 山あひのゆく先々に桐咲けり近衛兵なりし父憶ふかな ゼミ終へて先生囲み喫茶店にケーキ食みつつ語るは楽し 日日草十株植えて咲くうちに楽しき思い出十つくりたし 光沢の銀白色の穂を持てるパンパスグラス長府庭園 石垣にヒメツルソバの茂りをる行橋の街歩く霜月 国東のお寺の庭に咲くを見し皇帝ダリアわが町に看る しんしんとタイワンフウノキ黄葉す訪ひくる者は我ひとりかな 店頭に初恋草の苗売らる淡いブルーの花色なるよ 腹八分人付き合いは六分目と我の生き方自分で悟る ムツゴロウ数多這ひをる干潟には百合鷗一羽佇みをりき 二十歳に満たぬ戦死の兄偲びブーゲンビリア咲くをみてゐつ 冬の池鯉ら群れ来て餌を呑む睦月の光も吸ひてゐるかな 山頭火の家の跡地に山茶花の生垣ありて鈴蘭咲けり いぬふぐり星のまたたく如く咲くバス停に佇ちバスを待つかな 佛山寺行く道筋に連翹の黄の光る昼鶯の声 元旦の筥崎宮の花苑にて黄色の牡丹しばし楽しむ 清らかに鳴く鶯の声遠のけり逢はず久しき君懐ふかも みどりよりみどりの中に旅ゆけり寺に到りて心やすけし 昼顔はふと咲きいでてドヌーブのフランス映画憶ひをるかな 阿弥陀寺は紫陽花寺よ境内に赤白青と数多咲きゐて クレオメの花ピンク色あざやけし逢はず久しき君懐ふかも 狭庭には紫陽花の花枯れかかり蕗の葉大鷗外旧居 風に紛れ風に現れ秋の蝶観光客の頭にとまりぬ しんしんと百日紅は咲き盛り別府の街は白煙立つ 八月の日青蜥蜴の過りたる真上にミドウセージの花は咲きおり 赤白の睡蓮咲く鯉の池タップしたらば鯉ら集まる
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