俳 句 作 品 集
| 〜 ナ イ ア ガ ラ 瀑 布 〜 | ||||
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1990年及び1992年には、カナダのトロント大学に研究出張し、その際 ナイアガラ瀑布を訪れました。ナイアガラ・フォールズ観光は、二回目で、 ナイアガラ滝の秋と夏とを体験することができました。 前年(1988年)には多くの不幸ごとがありました。母と妹、知人や恩師など を失い、私自身も肺炎を患い、悲しく淋しい年でありました。従って、これ以後 離別の句が多くなっています。 しかし、出会いの句もあります。特に外国詠がそうで、日本で随分昔見ていたものを、 何十年ぶりかで外国で見る。石榴の実や弁慶草であっても、なつかしさをおぼえ 句になりました。 ここには 1989年(平成元年)より1992年に『俳句とエッセイ』及び『俳句』誌に 載った205句をまとめて『 ナイアガラ瀑布 』としました。
〜 ナイアガラ瀑布 〜
< スウェーデン(1975年) > サフランの花しほれけりウプサラ秋
< アメリカ・ウィスコンシン(1979年) > 川かます泳ぐバケツや秋の水
< 母(1986年) > 送り来て道に立つ母雪柳
< 母 病 む(1987年) > 八月十五日病床の母見舞ひけり 母病めば芒の穂影細かりし がまの穂のとんぼも水に影落とす
< 俳 句 の 友(1988年) > 秋の夜や鬼籍に入りし友の句読む
< 奈 良(1988年) > 法隆寺見える限りに金木犀
< 母 へ の 鎮 魂 曲(1988年) > 風花や母の柩にヴェール掛け 母逝きて冬虹の立つ豊後富士 春雨のひかりのつつむ母の墓 葉桜の坂昇りつめ母の墓 母逝きて紫君子蘭の天の色 墓地の岡白詰草の生ひ敷きて 墓の道紫薊蝶の来て 母の墓周辺緑驟雨来る 母逝きて八ヶ月経ち曼珠沙華 亡き母を想へば庭の菊時雨 母の墓クリスマス・イヴ燭ともす
< 肺 炎(1988年) > 秋風やカルスト台地羊群れ 咳込めば蟋蟀の声止みにけり 咳込んで蟋蟀の声聴いている 咳すれば萩の花また散りにけり 咳止めば蟋蟀の声澄みてゐて 咳こめば柊の花星と散る
< 子 等(1988年) > 日暮れても遊ぶ子等の手猫じゃらし
< 吾 が 庭(1988年)> 星月夜柊の花こぼれをる ゼラニウムまだ咲き続く師走かな 星の夜の柊の花こぼしをる
< 戦 死 の 兄 を 想 ひ て(1988年) > 寒椿落ちてしばらく輝けり
< 妹 も 逝 く(1988〜9年) > 佛頭をつらねる岩の山眠る 火葬場妹との別れ冬の雨 妹の骨ひろひをるおほみそか 妹の海投げ入れよ冬菊を 冬の海妹の海鷗鳴く 冬の海岸辺の波に鷗鳴く 妹逝きて架かるや冬の虹 妹逝きて水仙の香の立ちにけり 妹逝きて水仙の花白かりき 水仙花妹亡きあと青白し 母逝きて妹も逝くリラの香や 妹逝きて秋風白し須磨の浦
< 宗 像 風 景(1989年) > 山茶花の落花を雀踏みてをり
< 吾 が 庭(1989年) > 梅の花真白く咲きて神居ます 咲く花は皆白ばかり春の風邪 鈴蘭のうつむき咲けば蜂が来る ねずみもち咲けり白花臭ひして ゼラニウム白花咲きて夏の風邪
< 石 田 風 景(1989年) > 海棠の花に雀の声湧きて 立葵今日も一日雨降りぬ
< 家 の 中(1989年) > コーヒーを入れてひとりの四月かな
< 北九大キャンパス(1989年) > 藤の花長くたれゐて雀鳴く
< 昔 の 屋 敷(1989年) > 売りし家今もなつかし雪柳
< 友 の 句(1989年) > 今は亡き友の句を読み年を越す 図書館を出づれば銀杏黄落期
< 近 景(1989年) > 公園のコスモス子等の夢を織る 公園の子らの叫びや冬の虹
< メモリアム(1989年) > 母逝きて冬の電話機黒光 水溜り冬の天国揺れてゐる 霊園に棲み馴れて啼く寒鴉 山の墓地冬の鴉の鳴いてゐて 風花や母の墓前に燭ともす 風花や母の命日燭ともす 子等連れて母の墓参や山の藤 墓の坂葉桜にゐる鴉二羽 葉桜や墓の坂道汗かきて 母の墓鶏頭の苗生えてゐて 小春日や母の墓には鳩サブレ 母逝きて柊の花香り立つ 柊の花のこぼれて星月夜 クリスマス母の墓には鳩サブレ
< 彼 岸 花(1989年) > 筑紫の畦曼珠沙華ばかりなる 筑豊の畦道どこも曼珠沙華 畦道のどこもかしこも曼珠沙華
< 岡 山(1989年) > 法界院あたりはどこも金木犀 美術館出づれば踊り秋祭 川端の柳黄なみて秋祭
< 我 輩 は 猫(1989年) > じゃがいものあつあつ汁や漱石忌
< 神 理 幼 稚 園(1989年) > サルビアの咲き始めたる七月や 園児の合宿保育黄のカンナ 自転車を止めし所に花薊
< 眼 圧(1989年) > 教会のゼラニウム皆白ばかり 眼を病めば百日紅の紅炎えて 眼を病めば百日紅に雨の降る
< 子 供 達(1989年) > 向日葵や息子の声のおとなびて 百日白娘とともに触れてみる 除夜の鐘きく子の声の透きとほり
< 兄 妹(1990年) > 冬の雷兄妹げんか止みにけり 桃の花満開にして雨の打つ ケーキ屋へ通じる道や沈丁花
< 叔 父(1990年) > 立葵真赤なり叔父の七周忌 青松葉叔父の遺影の若かりし
< 兎 と 亀(1990年) > 蓮華田に兎放せる日もありし 青亀の水かへる頃リラ香る てのひらに載せし小亀が首を出す
< 葉 書 連 句(1990年) > 立葵葉書連句を待ちわびて 立葵女の連句また延びて
< 紫 川 畔(1990年) > 川土堤の菜の花道をジョギングす 川土堤の菜の花続く子等の道 コスモスや紫川の砂州に咲き
< 紫 陽 花(1990年) > 紫陽花や図書館裏の静けさに 紫陽花の青濃くなりて海の音
< 明 暗(1990年) > 百日紅ピアノきこゆるカーテン奥 蟬の声真暗闇にふと鳴きて
< エミリィ・ディキンスン生誕地(1990年) > アマストや数多赤花クレマチス アマストや車前草の花薹立ちて
< カナダ・モントリオール(1990年) > 実石榴やピンクの宝石つや光 石榴の実古代ペルシャの朱の色 弁慶草モントリオール墓地に咲く モントリオール墓地に咲きしよ弁慶草 カナダ薊モントリオール墓地に咲く 雁の群 V字形なり声走る
< カナダ・トロント(1990年) > 噴水の折れてトロント夏果てし 鈴虫のトロントに鳴く雨上り 噴水の方向かはり秋の薔薇 店頭のプラムころがす栗鼠のゐて 噴水の折れてトロント秋の暮 さらさらと散りゆく楓旅の果て トロントにすだくこほろぎ秋果てて 年惜しむともなくトロント旅の宿 < ナイアガラ・カナダ滝(1990年) > 遠望の瀑布にかかる秋の虹 遠望の滝に立ちをる秋の虹 滝落ちて立ち昇りたる秋の虹 虹立てり白き滝神噴きしもの ナイアガラ瀑布の白し秋の風 ナイアガラ瀑布の白し鷗飛ぶ 虹立ちしナイアガラ滝白鷗 滝の音スパイダフラワー花匂ふ 公園にスパイダフラワー花香る 大瀑布背景にしてカンナ炎ゆ 白瀑布遠景にしてカンナ咲く 月出でてナイアガラ滝水の嵩 ナイアガラ遠く離れて懸巣鳴く 滝の音遠く離れて懸巣鳴く
< ナ イ ア ガ ラ 植 物 園(1990年) > 蜂鳥や宙に浮きたる流星よ ナイアガラ薔薇園のばら木染月
< 庭 点 描(1990年) > 甘酒を含みて眺む冬の薔薇 柊や一花大きく匂ひ立つ 枝刈れば蓑虫ついてをる哀れ 残菊や中庭二輪十二月
< 国 東 半 島(1990年) > 国東の佛の里にしぐれ来て 国東の佛の里や草紅葉 こがらしや河野水軍の海へ出で
< 母 に(1990年) > いつ来ても寒鴉居る山の墓地 山茶花や鎌倉よりの鳩サブレ 山茶花や花びらほどの白き月 母の忌や墓前に燭と水仙花 山桜咲く径続き母は亡き
< 故 郷(1990年) > 山羊の乳しぼる木陰や吾亦紅 鵙の声熟柿落ちたる石の上
< 庭(1991年) > 金柑の輝くばかり庭の冬 鈴蘭のからんからんと風の中 紅白の斑の薔薇や童女の眼 金柑に夕陽のさしてひよどり来
< 水 槽(1991年) > 水槽の水温み亀動きだす 青亀の水取り換へて梅雨の雨 青亀の水換へすれば秋の雨 水底に眠れる亀や文化の日 神の留守青亀すでに眠りをり 鮒の水取り換へてゐる冬の雨
< 緑 を 好 み し 母(1991年) > 線香や風に吹かれて寒鴉 葉桜の坂道登る墓参かな 葉桜の坂を登れば母の墓所 葉桜や坂を登れば母の墓 紅白の斑なでしこ母の墓 鉢植の撫子枯れし母の墓 花の香の墓所をつつむ夏の霧 秋蝶の地に這ひてをる坂の道 冬蝶の止まりてゐたる母の墓
< 鎌 倉(1991年) > 鎌倉のあぢさゐ寺に雨の降る 紫陽花や鎌倉の町雨の降る 鎌倉の柿を食ひおる神無月
< 妻(1991年) > 妻急にパーマかけたり濃紫陽花
< 小 倉 抒 情(1991年) > 焼きいかの臭ひの中の夏祭り 木の下の乳母車にも蝉時雨 蟬の声じわじわと浮く白き雲 夾竹桃紅白ありて娘待つ 湖青きほど輝きし百日紅 姫女苑つんできたるよ吾が娘
< 筑 豊 風 景(1991年) > 緑なる谷間の里や田植時 香春岳遠景にして曼珠沙華
< 子 供 ら の 笑 顔(1991年) > 久留米より小包とどく吉井柿
< 心 象(1992年) > スーツ着て鏡の中の冬景色 沈丁花香の立ちこめて女客 あぢさいやセイラー服の乙女達
< 母 想 ふ(1992年) > 山茶花や白を好みし亡母想ふ 咳こめば山茶花の紅炎えてゐる 母の忌や隣の屋根に寒鴉
< 吾 が 庭(1992年)> 金柑ばかり黄色なり冬の雨 ひまはりの花より高き吾子の声 夜嵐やグラジオラスの茎折れて
< 鮒(1992年) > 寒鮒やバケツの底で川の夢 寒鮒の水換へやればはねる水 水槽の鮒っ子はねる春の水 水槽の鮒の水換へ春の雨 色白の鮒放流す春の川
< キャンパス風景(1992年) > 国語棟睦月明るき水仙花 恋猫の走りをるなり雪解月 連翹や黄蝶々々の群がりて < 亀(1992年) > 水槽の亀の水換へ春の水 朝と夕亀の水換へ子供の日 < ナイアガラ瀑布(1992年) > 白瀑布背景にブルーのサルビア 大瀑布遠く小さき木の葉舟 大瀑布音より高し夏の月
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