俳 句 作 品 集
| 〜 ス ノ ー ボ ー ル の 花 〜 | ||||
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『俳句とエッセイ』に載った 90句(1993〜1994年)と 小倉郷土大学(北九州市)の講演「アメリカ・カナダ俳句紀行」のために 創作した50句をまとめました。 1968年以来エミリィ・ディキンスンの詩の研究を続けていますが、 1990年8月にようやく、エミリィの生誕地アマストを訪れることができました。 エミリィの家と付近を散策し、墓所を訪ねると、そこには白い小花をまり状に つけている低木がありました。スノーボールという花でした。 アマストの夏に知ったこの花を記念にこの句集を『 スノーボールの花 』と しました。 〜 ス ノ ー ボ ー ル の 花 〜
< ハワイ(1990年7〜8月) > 雀鳴くハワイ八月椰子の下 八月や動物園に亀数多 池の中亀の泳げるハワイ夏 浦島の亀に会いたるハワイ夏 夏草や大亀のっそと歩みおる プルメリア大樹の下亀歩む ハワイ夏ニュージーランド産林檎食う 八月や植物園に蘭数多 八月の植物園やハーブ枯れ アイスクリーム口にしながら海眺む キャンパスや椰子の木陰で読書せり 軒下に楽園の花咲き乱れ 木の葉浮く真水のうまさハワイ夏 ハイビスカス近くに鳥の声しきり 紫陽花の枯れておるなり八月や 夏鷗アルカトラスに浮いてゐて 不可解な女近づく港夏 空缶集めの女八月や
< カリフォルニア大学バークレー校 (1990年8月) > ローラースケートの青年の夏バークレー 八月やディジーの白ばかりバークレー 八月や紫君子蘭咲くバークレー 天井の高き図書館涼しさや ハンバーガー店に入り来る乞食暑さ増す 八月のディジー白ばかりバークレー
< マサチューセッツ州アマスト (1990年8月) > アマストや虎杖の花薹立ちぬ アマストや小人浦公英道沿いに エミリの墓所スノーボールの白き花 エミリの墓所夏の駒鳥囀りぬ サルビアのブルーの咲ける田舎町
< カナダ・モントリオール (1990年8月〜9月) > 赤味さすマッキントッシュ宿でむく マッキントッシュ加奈陀味なりひとり旅 マッキントッシュ酸っぱき味や天高し 寺院前スパイダーフラワー香り立つ ビルの下スパイダーフラワー乱れ咲き 凧を揚ぐモントリオールの秋の風 ビーバーレイク真鯉緋鯉の水澄みて 実石榴やモントリオールの店頭に < カナダ・トロント (1990年9月) > バグパイプの音吹かれ来るトロント秋 「連帯」の人の波トロント秋広場
< ナイアガラ植物園 (1990年9月) > モネの睡蓮見付けり植物園
< 追 憶 (1992年) > 棺の母車に乗せし冬木立 桐咲くや故郷遠し母逝きて 秋風や墓に供へし鳩サブレ 柊の匂ひ広がる星月夜 < 心 象 (1992年) > 身の中に潮が高まる春の宵
< マサチューセッツ州プリマス (1992年8月) > プリマスや合歓の花咲き波の音 クランベリージュースの涼味海の風 クランベリージュースさわやか海の風 夏の旅メイフラワー号に白鷗 プリマスや白きマストに夏鷗 レタス摘むプリシーラに会う八月や バケツには死にたるカレイ臭いおる ピューリタン粗食とりをる夏の昼
< マサチューセッツ州コンコード (1992年8月) > 八月やコスモス咲きしコンコード コスモスや光をこぼすコンコード コスモスや妖精の如揺れ動き 暗闇の風の涼しさ夏の客 ウォールデン池の畔や車前草 八月のウォールデン池稚魚群れて ウォールデン池にこがます泳ぐ夏 ウォールデン池をまはれば稲光り ソローの小屋外よりのぞく夏の雨 ソローの墓小人浦公英つつましや オルコットの小庭の林檎青きかな オルコットの裏庭に数多紫君子蘭 メイの墓小さかりしよ夏の雨 みみずくの墓地に鳴きたる夏の雨 松林みみずく鳴くや夏の雨 ホーソンの墓に緋色の薔薇一輪 ホーソンの墓に一輪緋色薔薇 エマスンの大理石墓鬼百合や 鬼百合の威風堂々コンコード
< ナイアガラ植物園再訪 (1992年8月) > 黄の蓮ここにもモネの絵が浮かぶ 蜂鳥の声飛んでおる植物園
< ナ イ ア ガ ラ 瀑 布 (1992年8月) > 八月やカナダ滝より虹立ちぬ サルビアのブルーは清楚滝の音 滝離れ可愛い踊り子フクシャかな 滝の音背景にしてフクシャ花 がまの穂の影薄くして滝凍てて ナイアガラ河の岸辺に黄水仙
< カナダ・ヴァンクーバー (1992年8月) > キャンパスの木陰に動く黒き栗鼠 時計塔影細長く栗鼠走る 薔薇の花散りておるなりヴァンクーバー ヨット浮くヴァンクーバーの昼の海 昼顔の咲きて淋しき北の旅 昼顔の皆濃き白さ海の風 たんぽぽの夏の海沿い波の音 八月やたんぽぽ咲いて北の海 スパイダーフラワー見納めとなる旅の果て ヨット浮くヴァンクーバーの夏の風
< 田 園 (1992年) > かんらんの秋の畑に紋白蝶
< 梅光女学院大学キャンパス (1992年) > 女子大のキャンパス赤きななかまど
< 北九州市立中央図書館 (1992年) > 図書館の壁に始まる黄落期
< 永 遠 (1993年) > 寒鴉声する方や山の墓地 山茶花をふみつけてゐる雀たち 母の墓へ百日草の大輪を 母好きしドイツ鈴蘭庭に咲く 燭ともせど幾度も消える風の音 躑躅咲き鴉の鳴ける山の墓所 花躑躅満開の母の墓所 躑躅咲く母の墓には鳩サブレ なでしこを母に手向けば揚羽来る 母の墓グラジオラスの黄を捧ぐ 眠る山削るブルドーザー墓近く クリスマス母の墓には鳩サブレ
< 亀 (1993年) > 啓蟄や亀の子が目を開けてゐる サルビアの下を大亀のそのそと 大亀の小石かさこそ秋の夜 亀の子の土にもぐれり神迎え
< 安 芸 の 宮 島 (1993年) > 宮島の鹿のもの乞い春の雨 春雨やピンクの傘をさしてみる 牡丹桜満開の下和合神
< 兄 (1993年) > 落椿戦死の兄のふとよぎる 葉桜を見ながら桜餅を食ふ
< 薊 (1993年) > 青薊おこぜとなりて風を刺す
< 小 倉 市 民 球 場 (1993年) > 応援に風船飛ばす初夏の宵
< 鎌 倉 (1993年) > 鎌倉や桐の花咲く社の口 地霊居て社の桐の花咲かす 鎌倉の柿を食いをる神楽月 鎌倉の柿を食いをる除夜の鐘
< 祖 父 (1993年) > 楠若葉大樹に祖父を思ひをる
< 誕 生 日 (1993年) > ネクタイをもらう八月十五日
< 耶 馬 渓 (1993年) > 家鴨五羽列正しくて夏の川 裏耶馬や蒲の穂黒し百合白し 涼しさや山国川の鱒の群 蛇の子のぐったり延びて夏木立 ダリア咲く民宿村の田圃路 羅漢寺へリフトの途中蟬鳴けり 白百合や民宿村の湯の煙 鳳仙花はじける昼や雲の湧く 耶馬渓の鮎の笹焼き夏の宿 耶馬渓の民宿村や百合の花 耶馬渓の民宿茂助百日紅
< 近 景 (1993年) > 山茶花の花のくれない雀鳴く
< 国 東 半 島 (1993年) > 木枯らしや河野水軍の海に消え
< 花 (1994年) > 玉椿母の墓前に匂ひ立つ
< 坂 (1994年) > 咳こめば椿の落つる定年坂 躑躅咲く定年坂を登りつめ
< 降 雪 (1994年2月) > 段々と小さくなりし雪うさぎ
< 小 亀 (1994年) > 小亀えさ食い始む三月終りの日
< 別 府 楽 天 地 (1994年) > ケーブルカー登れば桜一分咲き
< 湯 布 院 (1994年) > 土筆つむ子に大いなる湯布の山 湯布の町どこもかしこも菜の花よ 湯布院や馬酔木花咲き湯の香り 通し土間涼し湯布院和紙作り
< 歯 医 者 通 ひ (1994年) > 歯を抜いて血の鮮烈や桜月 歯を抜いて鏡の中の春景色
< 大 亀 (1994年) > 大亀のいりこ食いをる春の水 大亀の鱗落ちたる五月かな < 昼 顔 (1994年) > パンジーの綾とりどりや電車待つ 蝦サラダ食うて涼しや海の風 (1994年) 昼顔の白き淋しさ波の音 七月や金柑の花白小星 青亀のまだ眠りをる四月かな 青亀の甲羅にやさし春の雨
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