短 歌 作 品 集

 

          〜 皇 帝 ダ リ ア 〜 

  

  

   

   

   

   

   

   

                 

  

   

   

   

   

   

 

  

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   『 短歌研究 』( 2010年1月号より 2012年11月号まで)に載せた短歌を

   収集してみました。

   愛犬がなくなってからは、一人の散歩が多くなりました。朝夕の散歩では、そこここに

   皇帝ダリアが見られる 11月ですので、この歌集を命名しました。

    〜 皇 帝 ダ リ ア 〜        

 

   池の面に浮かぶ睡蓮おしやりて泳ぎくる鯉の太き髭見ゆ   

   藤袴咲く季になりて二千キロアサギマダラは海を越え来る

   白野江に「十月桜」満開の一樹輝く十月半ば

   鳰ふたつしきりに水に潜りゐる山国川の秋の夕暮

   運転の家内の横を占めたりしダックスフントあくびしてをる

   白野江の植物公園坂径に命乾びし蜻蛉ひとつ

   くろき羽ひらひらひらとわがめぐり飛べる揚羽は母の化身か

   両側にずらりと並ぶ露天商梅ヶ枝餅は茶店で食へり

   木瓜の花六七輪開きゐて春は間近に来てゐるらしき

   たんぽぽのぽぽが何だか暖いクリムト画くたんぽぽあるよ

   亀山八幡宮の亀の池亀二十二尾日向ぼこしをり

   春の日もかく過ぎゆくか昼中に散る桃の花いたく静けし

   檀の実花の如くに赤く爆ぜひなご旅館にありしを憶ふ

   石州蕎麦酒蔵鍋と源氏巻津和野名物我は好みぬ

   山頂の万緑の中大気吸ふ近きに鶯啼くを聴きつつ

   これがその「たで食う虫も好きずき」のさくらたでかと犬と眺める

   劉生の麗子像見る美術館この小娘はいかに育ちし

   雨降れど露天風呂脇どうだんの赤く燃えゐて秋深まりぬ

   高々と皇帝ダリア聳え顕つ紫変じピンクの花よ  

   徹夜せしワイオミングのララミーに四時ともなれば鳥一斉に鳴く

   アガパンサス植物園に咲く見ればカリフォルニアの夏が懐かし

   広島で「キリマンジャロの雪」飲んで「モンブラン」食べし思い出若し

   おとろへは弱きところに出るらしく開腹手術の傷なほ痛む

   淡緑の風船蔓つぶしみるぽおーんと音す睦月空間

   つはぶきの花にさんさん雪降れば白鷺見えぬ津和野淋しき

   癌に病む犬を見守る春寒やがほがほ音し吐血してをり

   吐血して水を飲まなくなりし犬ただ座布団に坐り込むなり

   病みし犬四時四十分亡くなりぬ寒き夕なり妻に抱かれて

   木漏れ日の路を下れば著莪の花群なし咲ける坂に出でけり

   黒揚羽一羽飛びをれど花無くて青葉茂れる丘のいただき

   幼きの獲りくるどんこ黙々と母は裂きて煮たる戦後

   紺色の群がり咲きぬ鉢植えの露のいのちのロベリアの花

   蟬の声さわがしかりし坂の道百日紅の花紅かりし

   蓼の花ばかり眼に付く畑あり蝶居ぬ昼の淋しかりけり

   由布岳を背景にして秋づける桃のコスモス白のコスモス

   紫の房状の花気にかかり図鑑めくればメキシカンセージとふ

   霜月に子福桜の一本のぽつり咲きゐる門司港レトロ

   亀の居る亀山神宮亀の池霜月なれば亀も少なし

   愛犬と散歩したりしこの道のほとりに今年も山茶花咲けり

   傘さして散歩したれど人間に犬にも会わぬ淋しき朝よ

   白鷺の十五、六羽が佇みて餌さがしをる紫川に

   紫川に白鷺一羽佇みて餌さがしをる春の夕暮

   夢の中ベッドより落ちしたたかに左の眼下打ちたる痛さ

   足元におほばこの花咲きをりて森の中より鷺の声

   長雨のふるだけ降るや赤のまま犬亡くなればひとりの散歩

   青紫蘇の葉をつめば香りよきかなおのづからその歌浮かべり